アーティストの創作活動を支え、国内外の文化交流、地域創生、文化観光、企業のものづくりという点でも着目され、全国で増加、多様化しているアーティスト・イン・レジデンス(AIR)。日本のAIRの「これまで」と「これから」を、新しい表現を生み出すアーティストたち、足元にある豊かな文化を再発見していくプロセスを共有する運営者たちが、それぞれの経験に基づく多様な視点から言語化、記述する。まだ見ぬ未来を切り拓くための大切なヒント、アイデアが詰め込まれている。
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[目次]
はじめに――なぜこの本を作ったのか
第 1 章 AIR概説
アーティスト・イン・レジデンスとは何か?――芸術的・社会的価値を支える仕組み
第 2 章 AIRケーススタディ
1 日本のAIR――AIRと行政、黎明期から現在
2 地域づくりとAIR――アーティスト・イン・レジデンスと地域活性化
3 オルタナティブAIR――近さのための遠さ、遠さのための近さ
4 マイクロレジデンス――そのフィロソフィーとネットワーク活動
5 パフォーミングアーツのAIR――クリエーションを支えるAIRとネットワーク
6 伝統工芸とAIR――アーティスト・イン・レジデンスは工芸産地の衰退を救えるか?
7 国際文化政策とAIR――海外文化機関のAIR
8 美術館のAIR――多角的に求められる役割の方策のひとつとして
9 大学とAIR ❶――「産」「学」緩衝地帯としてのAIR
大学とAIR ❷――Y-AIR ― Artist in Residence for Young
10 AIRの未来――未来社会のための試行錯誤と実験の場をつくる
第 3 章 文化政策とAIR
1 AIRの定量的な過去と現状の把握
2 文化政策としてのAIRのあり方
第 4 章 AIRインタビューズ
1 森山未來 AIRはもぐら?
2 服部浩之 不確かさの魅力
3 ハイメ・ヘスースC・パセナⅡ AIRでの経験は、私を良き観察者にしてくれた
4 安藤祐輝 制作に対する視野の広がり
第 5 章 AIRのつくり方
1 AIRをはじめるためのQ&A――S-AIRでの経験から
2 AIRをはじめる・育てる・つなぐ
[COLUMN] 国際木版画ラボ/河口湖アーティスト・イン・レジデンス
おわりに
データ集
AIR一覧
AIRネットワーク/ポータルサイト
AIR研究報告書
AIR関連年表
執筆者紹介
[編者・執筆者]
【編者】
菅野幸子 (かんの・さちこ)
AIR Lab アーツ・プランナー/リサーチャー、AIRネットワークジャパン実行委員。ブリティッシュ・カウンシル東京、国際交流基金を経て現職。グラスゴー大学美術学部装飾芸術コースディプロマ課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究(文化経営学)専攻後期博士課程満期退学。博士(文学)。専門領域は、アーティスト・イン・レジデンス、国際文化交流、文化政策。主な著作に「現代アートとグローバリゼーション─アーティスト・イン・レジデンスをめぐって」(『文化政策のフロンティアⅠ─グローバル化する文化政策』〔勁草書房、2009〕所収)など。
日沼禎子 (ひぬま・ていこ)
女子美術大学教授、陸前高田AIRプログラムディレクター、AIRネットワークジャパン事務局。1999年から国際芸術センター青森設立準備室、2011年まで同学芸員を務め、AIRを中心としたアーティスト支援、プロジェクト、展覧会等の企画、運営を行う。2013年より陸前高田AIRプログラムを立ち上げ、プログラムディレクターを務める。「さいたまトリエンナーレ2016」ではプロジェクトディレクター、2017年より緑と花と彫刻の博物館(宇部市 ときわミュージアム)アートディレクターを務める。
【著者】
小田井真美 (おだい・まみ)
1966年広島市生まれ。3 ART PROJECT(東京)、特定非営利活動法人S-AIR(北海道)、TransArtists(オランダ)、アーカスプロジェクト(茨城)、VISUAL ARTS FOCUS(フランス)など国内外のAIR事業とその背景に関するリサーチ及び、AIR事業設計・事業運営や創造的活動支援の環境整備に多数かかわる。2023年現在、アートとリサーチセンター、さっぽろ天神山アートスタジオAIRディレクター、チームやめようメンバー。
勝冶真美 (かつや・まみ)
1982年広島市生まれ。広島市立大学国際学部卒業。民間財団や京都芸術センターを経て、現在は京都市アーティスト・イン・レジデンス(AIR)連携拠点事業コーディネーターのほか、国際芸術祭「あいち2022」コーディネーターなど、AIRを中心にアートプロジェクトや芸術祭でのコーディネートを行う。これまでの主な企画に日豪インドネシアのアーティストが滞在制作を行った「The Instrument Builders Project Kyoto」(2018、共同企画、京都芸術センター)、フランスのAIR施設ヴィラ九条山との共同展「Synchronicity」(2022、ヴィラ九条山、京都芸術センター)など。
森 純平 (もり・じゅんぺい)
1985年生まれ。東京藝術大学建築科大学院修了。2013年より千葉県松戸を拠点にアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」を設立。今まで400組以上のアーティストが街に滞在している。主な活動に《MADLABO》(2011~21)、《遠野オフキャンパス》(2015~)、《八戸市美術館》(西澤徹夫、浅子佳英と共同、2017~)、《たいけん美じゅつ場VIVA》設計/共同ディレクター(2019~)、有楽町アートアーバニズムYAU(2021~)、《相談所SNZ》など。2020年interrobang設立。
村田達彦 (むらた・たつひこ)
遊工房アートスペース共同代表、ResArtis名誉理事。1988年、創作・展示・滞在のできるアーティストのための創作館(AIR)を東京・杉並にパートナーである村田弘子と開設。アートを通した多様な文化の違いを受け入れられる土壌づくりの活動を開始。2010年、世界にあるアーティスト主導で独自運営のAIRプログラムを「マイクロレジデンス」と名付け、その顕在化と、AIRの社会装置としての役割を調査・研究し、国内外のネットワーク活動も実践している。
稲村太郎 (いなむら・たろう)
公益財団法人セゾン文化財団プログラム・ディレクター。高校生の時に見た「人間の条件展」(青山・スパイラル)に衝撃を受けて、アートの世界に興味を持つ。大学で芸術学を専攻する傍ら、都内でクラブDJとしてイベントをオーガナイズする。民間の文化施設で現代美術展やAIRの企画制作に携わり、その後、渡英。2011年からセゾン文化財団のAIR事業を担当。また、2011年から2019年まで株式会社ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室で研究員として文化政策や事業に関する調査研究を担当した。
杉山道夫 (すぎやま・みちお)
1960年アメリカ生まれ。大阪芸術大学工芸科在学中にアメリカのカリフォルニア美術工芸大学に留学し、1986年同修士課程修了後、1989年までアーチーブレー陶芸研究所で滞在し制作をする。同年日本に帰国し、滋賀県商工労働部に勤務。滋賀県立陶芸の森の設立準備にあたり、以後、アーティスト・イン・レジデンス事業の企画運営管理。2015年より海外のレジデンス機関とのネットワーク構築等に取り組み、国内の陶芸のレジデンス施設の交流の活性化にも尽力。また、2016年に信楽町内に店舗及び倉庫を購入し、共同の工房をシガラキ・シェア・スタジオとして運営。現在、一般社団法人シガラキ・シェア・スタジオ代表理事、公益財団法人滋賀県陶芸の森参与。IAC国際陶芸アカデミー会員。日本陶磁協会会員等。
バス・ヴァルクス (Bas Valckx)
オランダ王国大使館 広報・政治・文化部。オランダ、ライデン大学日本語・日本の文化学科卒業。在学中に留学と国際交流のために長崎・京都・島根に滞在。卒業後に2005年に国費留学生として東京へ転居。2007年より大使館勤務。現在、主にヴィジュアル・アーツ、デザインや文化遺産の分野で日蘭の文化交流促進に努める。
柳沢秀行 (やなぎさわ・ひでゆき)
大原美術館学芸統括。日本の近現代美術史研究。また、美術(館)と社会の関係について調査し、実践。筑波大学芸術専門学群芸術学専攻卒業。1991年より岡山県立美術館学芸員。6本の自主企画展を担当し、社会における美術館が果たし得る機能への関心から、同館の教育普及事業、ボランティア運営にも関わる。2002年より大原美術館に勤務。現代作家との事業や、所蔵品を活用した展示活動を担当。同館の社会連携事業を統括する。
石井潤一郎 (いしい・じゅんいちろう)
1975年福岡生まれ。美術作家。2004年よりアジアから中東、ヨーロッパの「アートの周縁/インターローカルな場」を巡りながら、20か国以上で作品を制作・発表。国際展『ISTANBUL BIENNIAL: Nightcomers(トルコ ’07)』『4th / 5th TashkentAle(ウズベキスタン’08/’10)』『2nd Moscow Biennale(ロシア’10)』『ARTISTERIUM IV/ VI(グルジア’11/’13)』『Larnaca Biennale(キプロス’21)』参加ほか、個展、グループ展多数。ICA京都、レジデンシーズ・コーディネーター。KIKA gallery(京都)プログラム・マネージャー。京都精華大学非常勤講師。
辻 真木子 (つじ・まきこ)
公益財団法人東京都歴史文化財団東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)職員。女子美術大学博士前期課程アートプロデュース研究領域修了。在学中からマイクロレジデンスである遊工房アートスペースのインターンシップに参加し、2016年より同AIRのコーディネーターとして従事。国内外アーティストの派遣・招聘活動と並行して、 AIRと美術大学の協働事業にも注力し、プログラムの運営に当たった。現在はTOKAS本郷にて、展覧会などの企画、運営を行う。
大澤寅雄 (おおさわ・とらお)
株式会社ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室主任研究員。特定非営利活動法人アートNPOリンク理事、特定非営利活動法人STスポット横浜監事、九州大学ソーシャルアートラボ・アドバイザー。慶應義塾大学卒業後、劇場コンサルタントとして公共ホール・劇場の管理運営計画や開館準備業務に携わる。2003年文化庁新進芸術家海外留学制度により、アメリカ・シアトル近郊で劇場運営の研修を行う。帰国後、特定非営利活動法人STスポット横浜の理事および事務局長、東京大学文化資源学公開講座「市民社会再生」運営委員を経て現職。共著に『これからのアートマネジメント―〝ソーシャル・シェア〟への道』『文化からの復興―市民と震災といわきアリオスと』がある。
作田知樹 (さくた・ともき)
文化政策研究者、Arts and Lawファウンダー。東京芸術大学美術学部卒業、東京大学大学院修了。行政書士。メディア・デザイン研究所所属。京都精華大学非常勤講師。専門は文化政策とアートマネジメントの実務および法務。単著に『クリエイターのためのアートマネジメント』(八坂書房、2009)、共著に『美術の日本近現代史―制度・言説・造型』(東京美術、2014)など。ミュージアムや国際展の事務局で学芸スタッフとして勤務した後、2016年から2年間国際交流基金ロサンゼルス日本センターで副所長を務める。また非営利活動として2004年「Arts and Law」を立ちあげ、プロボノの弁護士による無料相談を提供するほか、芸術・文化関係者向けの法、契約、人権、倫理、会計に関する正確な情報共有と議論の場を作っている。
柴田 尚 (しばた・ひさし)
特定非営利活動法人S-AIR代表、北海道教育大学岩見沢校芸術・スポーツ文化学科教授。S-AIRの代表として、23年間に37か国105組以上のレジデントの日本での滞在製作に関わるほか、海外13か国へ23組の日本人レジデント派遣も行っている。専門の現代美術だけでなく、音楽、ヌーヴォーシルク、廃校の芸術文化活用調査から縄文文化関連など、多彩な文化プロジェクトを実践。
書評・新刊紹介
● Webマガジン『artscape』2023/6/15号 カタログ&ブックス | 2023年6月15日号[近刊編]
https://artscape.jp/report/review/10185748_1735.html
● 東奥日報2023年6月26日号 記事紹介
● 月刊『ブレーン』宣伝会議2023年8月号 エディターズブックセレクト
● 月刊『美術の窓』2023年8月号 新刊紹介
● 『アートマネージメント研究』2024年3月号 書評(評者:鬼木和浩氏)